[私、12月の受験生だ。
本当は、通学の空き時間に読むべきなのは参考書なんだって、分かってはいる。
だけど、少しだけ。この章が終わるところまでだけ。
受験生って憂鬱だ、と思う。
大好きな本1冊を読むのにすら、なんとなく言い訳が必要になってしまう。
だけど、どうしたって誘惑には抗えない。
そう思いながら、ぱら、と開いた頁に、アニメ絵の少女と少年の挿絵が覗いて、慌てる。
隠すように本を半分閉じて辺りを伺ってしまうのは、もう癖だ。
花柄のブックカバーの内に隠しているのは、マイナーな作家のライトノベル本だ。
表紙で微笑む少年と少女の雰囲気があまりに好みで表紙買いしてみたら、中身も当たりだった本。
挿絵の入った頁を飛ばすようにして、文字だけが踊る頁を開く。
あの頁の話と挿絵は、家でゆっくりと堪能しよう。そう決める。
そこでやっと安心して、ほう、と息を吐いてしまう、自分が嫌い。]
(63) 2015/07/04(Sat) 08時頃