[違和感を覚えて、立ち止まる。
見回すと、地に猫の死骸が横たわっていた。傍らには奇妙な扇]
見た目は死んでいるが――、この猫の周囲のみ、僅かに次元が歪んでいる。
魂が一時的に何処かへ隔離されている?
[疑問を述べつつ、手をかざす。
紡ぐ術式は、教会で女を癒したものと同じ黄金色《きん》の光。
かくして猫の傷は癒えた。しかし当然、息を吹き返す事も無い――筈だが。
次元は歪んだままそこにあり、肉体は魂を待ち受けるかのように活き活きと体温を上げている]
……真逆、世界繋ぎの担い手《ヴェルトバインド》だとでも言うのか。
この猫が――いや、この猫を媒体とした何者かが。
[それは余りに稀少な、とうに滅びたとされる術の遣い手。
少し考えると、拘束衣の一部を解いて。
猫と扇を胸元に突っ込んだ]
今度こそ――†デメテル†への献上品としよう。**
(62) 2013/05/25(Sat) 01時頃