── 朝:通学路 ──
……あ。
[何かを受け取ったことを示すスマホの振動は、待ち望んでいたあの子たちからのものではなかったけれど。
それでも、好意的な文字列>>22は、嬉しくないわけじゃないよ。
スカート短くしすぎて、って、冗談にしても、ちょっとサムイけど。
嘘です。冗談。だけどきっと、あの子たちならそう言うはずだ。
わたしもそれに同調して笑いながら、それでも「そうかな、ひまちゃんかわいいよ」って、まるで悪口じゃないって顔で言うの。
たぶん、わたしは相当性格が悪いけれど、それを知った上で"遠野雛子"のキャラクターを許してくれる、そんなあの子たちを、きらいになれません。
くす、と微笑んで、返信するのはやめた。
教室がひとつのだだっ広いスペースだなんて、幻想。
いつだってわたしたちは、その僅かな段差を踏み外さないように、ひとつでも上の段に立てるように、牽制しあっている。
少なくとも、わたしみたいな、なんとか一番上のステージにしがみつくようにしている女は。]
(62) 2015/10/28(Wed) 23時頃