[やがて三年になり、そして中学を卒業した。
岡野とは別の高校になり、それから会う回数は少なくなっていった。
少し寂しい気もするが、そういうものかもしれない。
お互いに連絡先は知っているが、毎日連絡を取り合うようなことは決してなかった。
そして高校は中学と違い、平和だった。
中学のときは髪色のことで難癖をつけられたが、高校では地毛だと告げるとそれきりで、クラスメイトは普通に接してくれた。
授業中に騒がしいことも、物が飛び交うようなこともない。
因縁をつけられたり、喧嘩を売られることもない。
中学時代と比べると、高校はまるで楽園のようだった。
望んでいた生活がそこにはあった。
そうして無意識のうちに、中学時代のことに蓋をしていた。
嫌な目や、思いをしたことを忘れようとして。
――いい思い出にまで、蓋をしてしまっていた。
貸してもらった本のことも、あの日見た夕日のことも、岡野のことも、次第に薄れていった。
岡野は一日も、忘れたことなどなかっただろうに]*
(62) 2014/04/16(Wed) 23時頃