―回想・5月5日14時過ぎ、総合病院の一室―
>>56
それは、なんつーか…ありがとう
[視線は窓の外に、けれど全神経は傍らのチアキへと注がれていた。
正直困る、調子が狂う。朝、彼の言葉を聞いた時には訪れなかった混乱が頭の中を掻き乱す。
またあの少女の顔を思い出した。本人は遠回しに否定してはいたけれど、あれが恋情でないなら他のなんだというのか。劣情?それだけとはとても思えない。
ざまあみろと…笑ってやりたいのに笑えない。
鏡写しのように、あの時の自分の揺れを、思い返す――つまりはそういう事なのだろう]
…………振ってねぇ、よ
つか、アレだ…何か、勝手に、その…応えたつもりになってたっつーか、よく考えたらお前、意識なかったのに…――〜〜、ああ、クソッ
[もどかしさに舌打ちしてまた髪を掻き混ぜた。言葉にするのは、存外に羞恥が伴うものらしいと…初めて知った。
ともすれば逸れそうになる視線を傍らに座る幼馴染へと向け、唇を噛み締め、薄く開けてはまた閉じ――傷の痛みも厭わずに右手をその肩へと回して顔を寄せた。
そして叶うならば熱持つ唇を彼のそれに触れさせようと首を傾け――]
(61) 2013/07/30(Tue) 03時半頃