[そうして、さて誰が来ているのかと周りを見渡せば――あぁまったく。眼鏡が無ければ道路の向こうの看板の文字も見えない癖に、こんな時ばかりはしっかり仕事をしてくれる目だ。
貰った名刺と同じ色の髪>>50を真っ先に見付けてくれた目には心の中で悪態を吐き、同時にずくりと一度跳ねた心臓には内心で舌を打つ。
けれど、彼の名を呼ぶ事はしなかった。彼の隣に、こういった集まりでは幾度か見かけた事のある青年の姿>>34が見えたから。
挨拶くらい、何時でも出来る。胸に伸し掛る落胆を振り払うようにそう自分に言い聞かせれば、一度短い息を吐き。
目を伏せ彼らの姿を視界から外して、今度は別の方を見回してみれば、そこには見覚えのない顔>>29と、見覚えのある顔>>39と。そして自分よりも少し前に到着したらしい人物達>>45>>53へと順に視線を巡らせば、肺に溜まった息を吐いて晴れた空を見上げる。
上げかけもしなかった手は、今も変わらずポケットの中。
冷えた手をただただ健気に温めてくれるカイロに小さく眉を下げ、ポケットの中で暖かなそれを再度強く握り締めた。]
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(61) 2015/11/18(Wed) 02時半頃