>>56
[打てば響くように返る言葉は、常と変わらぬ異国情緒に彩られた店内の空気も相まって。霧のように晴れず己の内に篭った苛立たしさを、瞬間忘れさせてくれるようでもあった。僅かに疼いた感覚と共に、自然に彼の腰──眠る彼へと悪戯する対象として、普段好きにはできない形の良い脚腰の存在はいつでも魅力的だ──へと落ちた瞳は、己を見つめる黒曜石の双眸に気付いて彼の顔へと再び上がり]
……どうした。見惚れたか?
[口ぶりだけは、常と同じ軽さであり。しかし声底が低く翳んだ響きは隠しきれなかっただろう。ソファについた腕を曲げ、露蝶の鼻先へと自身の顔を緩やかに寄せ。フッ、と悪戯に息を噴きかけて、形ばかりに唇が歪み微笑って]
そいつは良いねえ、何か奢ってくれよ。──露蝶のステーキでも良いぜ。アンタの脚なら齧る気になれそうだわ。
…、ここ数日ほとんどご無沙汰でな。そっちも、胃もよ。…何か見繕ってくれねェ?胃薬かなんか。
(60) 2013/07/17(Wed) 19時半頃