[なんだか謝るような声が聞こえた気がしたが、自身の目的、キスのために必死で何も聞こえなかった。
ああ、この手の熱が君>>50に伝わってしまわないだろうか。伝わっているだろうな。自分だけがこんなに熱を持っているのだろうか。恥ずかしい。
相手の体温は、緊張した彼には伝わることがなくて。
そのまま、手を取ってキスをそっと落としてしまった。
彼の反応を伺いたくて目をやってみたけれど、ふと目線を逸らされてしまえば、これが相手にとっては気に入らなかったものだったのかと不安になる。
長い髪でその表情が隠れてしまえば、それを確かめる術は言葉しかないのだろうか。]
……、
[彼の名を呼ぼうとしたが、それは言葉にならなくて、喉元に引っかかるだけとなってしまって。
このもどかしい感覚は、以前感じたそれと似ているような気がしたが、いや、まさか。
脳内に数年前に去った彼女が過ったが、軽く頭を振って無理に忘れることにしよう。]
(59) 2015/04/10(Fri) 08時半頃