[俺の中には、母の血と、その母を地獄に追いやった獣の血が流れている。
この矛盾に、果たしてどう納得すればいい?
顔も名前も知らない、自分の行為が何を齎したのかも知ることのない、
考え得る限り最悪な父親は、クソみたいなことに、俺の中に獣の遺伝子を残していった。
否定したくても、血は血。それが真実。
人を威圧することが容易い立っ端に、運動部でもないのにそこそこ強い腕力。
抑え切れずに溢れ出てくる欲望と、飢え。
ああ、まるで、女を襲うために備わったものだと言わんばかりに!
体内を巡る血に、遺伝子に、鳥肌が立って、気が狂いそうになるんだ。
本能に操られる俺は、俺じゃない。
俺の中の化け物、ゴミ野郎が、内から食い破って外に出ようとしてきやがる。
“メチャクチャにしてしまいたい”
獣の欲望は、そう叫び続ける。
忘れんなよ、お前は間違いなく俺の子だ。過ちの子だ。と、笑っている。]
(58) 2016/09/17(Sat) 03時頃