―回想:2年前の春・街の病院―
あのね、エリアスちゃん、わたし……
エリアスからプロポーズされちゃったみたい!
真剣な顔で、手を握ってね、
「君の事ばかり考えてるんだ……」だって!
[ くすくす笑いながら、その青年と同じ名を持つ少女の顔を覗きこむ。彼の事は以前にも話していた。]
それでね、わたし答えたの。
エリアス、貴方は素敵な方だし、わたしも好きだけれど。 身分が違いすぎますもの、お酒の酔いが見せた一時の夢ですわ、って。
[ 恋の熱に浮かされてしまってるのよね、彼はきっと。
あらましを語ってからわたしはそう結論づける。]
エリアスちゃんは……どう思った?
やっぱり身分違いの恋って無理だと思う?
[ 尋ねてはみるけれど、もしかすると、彼女はまだ初恋も知らないのかもしれない。エリアスがいつも死の影を意識している様子なのには、気づいていたから。
でも、恋さえも知らずに亡くなってしまうなんて、なんて寂しいことだろう。そんな事にはならなければいい、とわたしは願っていた。]
(58) 2016/12/07(Wed) 22時頃