[熱いほうじ茶のゆったりとした湯気がくゆる。
暖かな指導室は、名前と違ってうららかな空間になっていた。
小さな声と、そおっとした扉の開閉音。
いつもならすぐに顔を上げられたかもしれないが、割と眠りが浅くなかったようで
ゆらゆら、跳ねた黒髪が揺れたままでいる。
ほんの少しだけ、夢を見ていた。
夢と謂うか、これは今朝のHRが始まる前だ。
綺麗な名無しの字や、ライの書き込みを見るだけ見て、ページを閉じた。
特におれからは新しい書き込みはしないまま。
ただ暫く黙って見て、“F”が書こうとしていた三行目に
小さく黒い眸を向けて、そこにない文字を読んだ。]
い、か?
[それはかすかな寝言になって零れた。
静かな室内、聞き取ることは容易かっただろうが
指導室常連がなにか悪戯でも企てるのに夢中だったら聞き逃してしまったかもしれない**]
(58) 2017/12/16(Sat) 07時頃