[やや強引な手に従って、彼の家先へと収まったなら。
椅子を奪うのは流石に憚られたものだから、結局その場にしゃがみ込んで。
そうして目眩が収まる頃、改めて顔を上げる。
迷いなく駆けてきた彼を直視するのは居た堪れなくて、その首あたりでうろうろと視線を彷徨わせることになったけれど。
――だって、自分ならば。手伝おうとは、…思えない。]
……は――…いや、ごめん。…大丈夫。
随分と…みっともないところを見せてしまったね。
…そちらのお嬢さんも。
[揃いも揃って、一回り近く歳下だろう二人。
フードの彼女がどんな表情でこちらを見ていたかは――好んで確認したくはなかったから。曖昧にぺこりと頭を下げるのみ。
幾度も客になったこともある少年に、今までもこうして世話を掛けたことがあったかどうかも、…思い出して確認したいものではない。]
はは、……、
…放っておいてくれて、構わなかったのに。
[何やってるんだ、なんて呆れめいた声>>53は聞こえこそしなかったけれど――心の内ではとっくに、自分で吐き捨てている。
身を起こしてようやく立ち上がろうとしながら、礼を言うより先に、苦笑をもう一度。]
(58) 2015/04/08(Wed) 06時頃