―回想 数日前、あるいはもっと前、裏路地の通りにて
クシャミにとってはありふれた、「仕事」の光景―
[路地に、猫のように座るクシャミ。その服装は、素肌の上に厚手の大きな毛布一枚、首輪に大きな金色の鈴という、いささか過激なものである。
目の前にはキャットフードの箱、牛乳瓶、真鍮製のペット用食事皿、金銭を入れるためのダンボール箱、そして文字の書かれたプレートが1枚。
プレートには、「猫の食事光景を見たい方は、箱にお金を入れてから、食事をあげてくださいね」と書かれている。
彼女の前に一人の男が訪れる。箱にお金が入れられ、牛乳とキャットフードが食事皿に入れられる。クシャミはまるで猫のように、キャットフードを貪る。時折、猫のように鳴くことも忘れない。
物好きな者はいつの時代も存在し、夜の裏路地にはそういう者が集まる。クシャミが生きながらえているのは、彼らのお陰と言っても過言ではない。
たまに、それこそ本当の猫にするように、クシャミの喉を撫でる客もいる。それに対して「なぁご」と鳴くことも、もう慣れきってしまった。
彼女は現状、そうやって生きている。]
(57) 2013/07/17(Wed) 18時頃