~葬儀での出来事~
[愛しきマダムの遺体の安置場所である教会に、上着のフードを目深に被り、足を踏み入れる。啜り泣くような声の中、無表情で一筋の涙も見せず、小柄な身体は参列者の脇をすり抜け、スムーズに彼女の棺の元へ導かれていく。]
……っ、ぁ、ぁあ…!!!!!!
(嗚呼、貴方は死して尚、それでも美しいのか!)
[もう涙はあの電報を受けた際に流し尽くした。今は彼女の身体がそばにあるということだけが幸福だった。感嘆にも似たため息をもらし、恍惚とした表情で棺をなでた。フードはそれを隠してくれたのだろうか。本当は彼女の頬に触れたかったが、目立つだろうから。そんな顔もひょいと引っ込め、周りに合わせて顔を歪ませ、名残惜しいように棺を離れる。
そんな中、聞こえた舌打ち。>>33
不協和音だった。元々絶対音感持ちは周りががちゃがちゃと煩いので大概は慣れていたが、無表情のまま、眉だけつり上げそちらを一瞥。彼女に舌打ちなど下等なこと、と言葉には出さず、唇を一文字に結ぶ。
……どこか、懐かしいような雰囲気を感じた。なんとなく、美味しそうな香り。頭をふるふると振って、それを隅に追いやろうか*]
(57) 2016/07/27(Wed) 01時半頃