― 街/東部 ―
[一匹の蝙蝠はふらふらと、慣れない陽の下街を進む。普段ほど奇異の目で見られることはないけれど――それでも気味悪がられることには変わりはなく。]
『なんでこんなところに蝙蝠が居るのよ!嫌だわ、気味が悪い……』
『きっと、あの影のせいに違いない!あれは影の手先なんだ!』
[あちらこちらで身勝手な声。声。焼けるような身体に、血を欲して乾く喉が「殺せ」と声を上げる。
それに従ってしまえと思う反面、心残りは未だに胸につかえていて。ぶんぶんと首を横に振って考えを取り払う。]
(そういえば……酒場は無事なのかな……、)
[くるり、と旋回をして視線を前に。どうやらアイツらは「影の正体は亜人だ」と決め付けているようだし、……それならば亜人の集う酒場が真っ先に狙われてもおかしくはない。]
……おねえさんは、……無事でしょうかねぇ、
[ぽつりと呟いていれば前方に兵士達。何だか言いようの無い不安を抱きながら、何事もなく彼らの横を通り向かうは酒場の方面へと。]
(56) 2015/01/14(Wed) 19時半頃