[幟乃は思わず手を引っ込めて、そちらをじーっと見つめます。青年からは落ち着いている様子が伺えたした。敵と分かればすぐさま此方に向かってきそうです。幟乃は手裏剣を握る力に手を込めて、こう答えました。]
無礼者、名は訊ねる前に答えよ。
[先程、ラピスに名前を問うた自分のことは棚に上げて偉そうにそんなことを言いました。お前はという言葉は、幟乃に青年とラピスの過去の接触を推測させます。幟乃はそこを深く考えることはしません。
どういうつもりでそのような言い方をしたのかは、幟乃にも分かりませんでした。ラピスは黙って何も答えないようです。仮に嘘をつかれていたとしても、その時はその時でしょう。
───…幟乃は簡単にやられる気などありませんから。]
仕方ないから、このわたくしが名乗ってやる。
幟乃だ、その胸に刻んでおけ。
[くつくつと笑って、対峙する相手の様子を伺います。]
(56) 2014/12/26(Fri) 12時頃