>>54
[扉越しに聞こえた声は聞き覚えがある。覚えがあるからこそ、その珍しさに目を瞬いた。
トレイル――自分はトーイと呼んでいる彼。初対面にも関わらず自分を“男”として口説いてきたのはこの町では今のところ彼しか居ない。無遠慮さと、何よりその顔を気に入って二つ返事を返した店主も店主だが。
それ以来懇意にしている彼は、店主の“営業態度”を知ってからは大体勝手に店に入っていたと記憶している。
長椅子でつい転寝をしていた時に勝手に入り、脚を撫でられて反射的に引っ叩いたのはいつの話だっただろう]
今日の稼ギは十分ネ。明日はイイもノ食べられそウ♪
誘ってもイイけド、具合悪いんじゃないノ、トーイ。
お腹でも下しタ?
[軽口には軽口の応酬。気遣いなのか彼の性癖への揶揄なのかは彼の感性次第。此方に落ちる顔に首を傾がせて見上げ、じっとその顔色を観察してみる。
普段の彼と、何か変化はあるのかと]
(56) 2013/07/17(Wed) 18時頃