…おれに?…………えっと、
いらな、……ぁ、いや。
好き、じゃない。…うん。あまり。ごめん。
―――だから。おれの分も、食べると良い。
[――好きと、嫌い。
一体どちらで答えるのが、彼の為になるのだろうか、と。
結局、勝ったのは自己防衛。
子供の真っ直ぐな好意は居心地が悪くて、…何か面倒なことになったら、堪ったものじゃあない。
なんとか上手いこと、それっぽく繕ってはみたけれど――上手くいったかどうかは怪しいところ。]
たくさん食べて、大きく…なりなよ。
……大きく…、ぁー、……たぶん。
[子供への接し方を、多く知っている訳じゃあないから。その一言は、この子に限っては不似合いだったかもしれない。
菓子の一つも持っていたら、機嫌も取れただろうに。広場と共に近付く、商店街のパンの匂いを感じながら思う。
歩く速さを落とさないようにするので精一杯なのは、あまり認めたくはなかった。]
(56) 2015/04/06(Mon) 12時半頃