[フェンスにかけた手。もうそこまできてしまえば、あとは、乗り越えて、飛び降りて、それだけだった。──それなのに、どうしてだろうなぁ。息が整わなくて、指先が小さく震えていて、足だって雲の上にでもいるように頼りなくて。こんなんじゃ、フェンスを乗り越えることすらろくに出来やしない。あと一歩。踏みとどまってしまったその僅かな間に、誰かが追いついてきてしまっただろうか。泣き出してしまいそうで、唇を噛む。秋野は、きっと、どうしようもなく弱い。*]
(55) 2015/06/28(Sun) 21時半頃