─5月4日 早朝 チアキ自宅庭─
>>46
[塀越し、暫し静かな庭から面白くなさげに爪先を逸らしかけたのと同時、ひょっこり塀上に乗りあがるよう現れた顔にぎょっと脚を止めて上半身をやや引いた。己にとっては、叫ぶに近い大声での呼びかけも、彼から気持ち身が距離を取ったまま耳を片方指で咄嗟に塞いで顔を顰めさせる原因になったが。自身と同じく少し濡れた彼の格好もあり、すぐに合点がいったように片眉上げると、彼の状態など知る由もなくメンチ切るように面を寄せ]
テメェか、チアキ!急になに善良な通行人さまに水ぶっかけやがっ──、
[彼のペースに飲まれないようにとか、まくし立てかけた言葉が──ふと、明るい笑顔と共に向けられた問いに、思わずに咥内へと薄れて消えた。胡乱げに、チアキの変わらない…この、こんな日にまで全く変わらない、明るすぎる笑顔を少し黙して眺め]
(55) 2013/07/25(Thu) 21時頃