― 昨夜・自室 ―
[「ごめん」と謝って毛布を取ってくれた芦屋先輩>>50に、けれど未だちゃんと視線を向ける度胸は持てなかった。
泣き腫らした目は見られずに済むかな、なんて、漠然と考えたりもしながら]
私こそ、なんか、すみません。
確かに、びっくりしました、けど……
[謝る言葉の先を言い淀んだまま、けれど私は先輩の言葉に、うん、うん、と相槌を打った。
この時の彼女は、やたらと口数が多かった。そもそも「王子様」にしては妙に気弱な声色に聞こえた。
それが新鮮というか、今まで先輩に対して幻想を見過ぎていたと気づかされたというか、そんな気がした。彼女曰く、この格好は昔から、というくらいなのだから。]
その、先輩が嫌、って訳じゃないですし。
露出狂だとも、思いませんし……。
先輩の気持ちが落ち着くまで、お付き合いしますから。
[「落ち着くまで」という言葉は、私の推測からのものでしかなかったけれど。
他愛ない話でもそうでなくても、聞くだけでも聞く心算で、机の前の椅子へと先輩を促した。]
(55) 2017/01/31(Tue) 14時半頃