— 回想:過ちとされる存在 —
[高校1年の頃に知った事実を、簡潔にまとめようか。
母・来島 輪は、学生の身分の時に俺を身籠ってしまった。
父親——と便宜上呼ぶ——は、顔も名前も知らない、どこかの誰か。
とある夜、遅い帰り道を歩いていた来島 輪は、何者かに脅迫され、一方的に暴行を受けた。
全てが終わった後、犯人と見られる男は既に逃亡しており、未だ捕らえられていない。
来島 輪の体に付着したDNAや、もろもろの手掛かりから捜査していたらしいが、その甲斐なく時効を迎えてしまった。
後味の悪さしか残らない事件。
それはきっと、犯人がこれから見つかったとしても、だ。
来島 輪の傷は、若くして、一生癒えることはない。
古い事件で、ニュースでも少ししか取り上げられなかった事件だけど。
警察関係者なら資料くらいは持っているかもしれない。
この“犯罪”から産まれたのが、この俺、ということらしい。]
(55) 2016/09/17(Sat) 03時頃