―回想/5月5日夕方 「三元道士」店内―
>>20
そうっす。ナユタ君のところでお世話になってました。
この薬すごくよく効いたっす。
[薬の処方を断られ、マドカはどうしたものかと頭をめぐらせる。まだ体調が悪いと偽るか、それとも緩めの薬をもらうか…。マドカは店員が、こちらに観察するような視線を向けいることに気付いた。ダメだ。きっと見抜かれる。強気に金をチラつかせれば、売ってくれるだろうか…。兄が残してくれた佐藤家の貯蓄がある。いや、そんな金銭にこだわるタイプにも見えない。正直に話せば、衰弱した人物について、詳しく話す必要が出てくるだろうか。悩んでいる最中も、店員は気だるげな表情でマドカを見つめている。マドカは蛇に睨まれたカエルのように固まるが、やがて重い口を開き、正直に状況を説明した。]
今日買いにきたのは私の分じゃないんすよ。
もう1人、衰弱してて、私より、危ない状態の人がいるんっす。
お金なら、ちゃんと持ってきてるっす。
売ってください。お願いします。
[目線は逸らさない。ここで薬が変えなければ、他の薬屋をすべてまわるしかない。時間に余裕はない。栄養失調の薬だけは、なんとか売ってもらわなければ。]
(54) 2013/07/30(Tue) 00時半頃