[>>53問いかけによる答えは得られなかった。
それでも尚もミナカタの扉の近くから離れようとしないヴェスパタインの様子から察するに、彼ら二人の間に何かがあることを気に留めておいたが。
手を振り払われたが別段気にした様子は見せない。
手の甲に走る僅かな熱よりも、目の前の言葉を耳にすることを優先したかったから。]
…そう、ですか。
[ここの教師である以上、生徒の名前は覚えていなくとも、顔を知らない、なんてことはそうそうないだろう。そして続けられた言葉にその死体がわからない程に無残な物だったのだと察する。
一度だけ顔を顰め、すぐさまその場所へ向かいたいと足が疼く。
死体が誰なのか、気懸りであったから。
だが、今目の前にいるこの人を置いていけなかった。]
…ごめん、泣かないで。
[思わず出た言葉は謝罪。
自身の好奇心を貫くあまりに、辛いことを思い出させてしまったのだろうと思ったから。
辛いことが今朝彼が見たであろう死体以外にもあるとは知らない自分はただ、顎を伝う前にその雫を掬い取るくらいは許してくれないかと、指を伸ばしたか。]
(54) 2014/06/23(Mon) 19時頃