――墓地――
[長く生きている間に世界はどんどん変わっていった。
祖国は大きな戦争に負けたというニュースも耳にしたが、その時両親がまだ生きていたのか、既に死んでいたのか、それともその戦争で命を落としたのか、確かめようもなかったし確かめる気もしなかった。
祖国は既に遠く、男の居場所は「此処」にあった。]
便利な道具がいっぱいできて、家事はスピーディになったけど、墓参りの時間は伸びるばかりだな。
[並ぶ石碑に花束を投げ、今だ生き返っては来ない師匠と兄弟子を思う。
その近くには、自分が眷属となった日までアオの一番近くで彼の生を支えていた犬の名が刻まれた小さな石碑。
他にも、小さな石碑は人間よりも短い年月が刻まれ、点在していた。]
……まだ、生きてる。
[こうして墓参りも出来るし、仕事も順調だ。
最近はネットショップも開設し、販路を広げている。
きっと自分は依存症を克服した最初の眷属となるのだ。]
(54) 2019/10/08(Tue) 21時頃