―回想・5月5日14時過ぎ、総合病院の一室―
>>39
[足音が遠く溶けて消えるまで無言で扉を見詰めていた視線を、傍らに立つ彼へと向ける。重ねていた手を袖口へと滑らせ、促すように引いた。
彼が身を屈めてくれたのならば、未だ濡れた頬に触れさせようと右手を伸ばし]
……朝はなんつーか…黙って出てきて、悪かった
書き置きでもしてきゃよかったって、撃たれた後に気付いた…死ぬ訳でもねぇのに、なんか、こう…後悔したっつーか……って訳分かんねーよな…
[呟く声は段々と小さく、頬へと触れていた手を引いて乱雑に髪をかき乱した。
何を言っているのだろうと、我ながら思うのだ。そんな場合では、状況ではないと。
――やる事は山積み、それなのに緊迫した心の片隅がおかしな具合に疼く。
熱のせいだ、そう自分を誤魔化して窓の外へと視線を流した]
(52) 2013/07/29(Mon) 23時半頃