―回想:チャットアプリ―
せ、んぱい?
[カタカタとキーボードを叩く音で真琴は目を覚ました。
寝起きの焦点の合わない視線が薄暗がりに光るディスプレイに照らし出された先輩の後姿を捉える。
むくり。ベッドから身体を起こし、乱れた髪を整える。
脱ぎ散らかった制服、ベッドの端に追いやられた下着。
どうやら先輩の個室で寝入ってしまったらしい。
慣れというのは怖い。初めの方こそ緊張していたものの今や真琴の部屋同然にリラックスしている。順応しすぎかと突っ込みたくなるぐらいには、此処が自分の居場所であるかのように錯覚する。
「起こしちゃった?」と声が掛かった。
真琴は返事をする代わりに、先輩の背中に抱き着いて。
先輩は何してるんですか? と画面を見つめる。
「ああ、これかい? ちょっとした情報収集さ」
どこかで見たことのある画面。そう、これは入学したての頃にダウンロードしたチャットアプリだった]
先輩……これって。
(52) 2017/07/07(Fri) 12時半頃