155 【身内】砂煙の村


【人】 ランタン職人 ヴェスパタイン

ああ……、ベネット。
なんだか向こう、騒がしくないかい?


[彼は未だ、自身の手を取ったままであったろうか。もしそうだったならば、そっとその手を抜き取って、何事もなかったかのように声を掛けただろう。

彼と触れ合うと、布1枚の存在さえ、もどかしくなる。
――彼女のときは、そんなこと思い浮かびもしなかったというのに。

ああ、訳のわからない感情には、取り敢えず蓋をしよう。そうして次の話題を探せば、騒がしい声が聞こえて、ちょうどよいとばかりに彼に投げ掛けてみる。

頬の熱は中々引いてはくれないけれど。広場の方へと注意が向けば、きっと彼には分かるまい。]

(51) 2015/04/10(Fri) 02時半頃

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