[藍里は思考を戻した。他の車両には人の気配がない。
黒幕がいるとすれば、この中か車掌だろうと受け入れがたい現実の中で、冷静に考えを巡らせる。
車掌の言葉を信じるならば、やはり最後まで乗車しているわけにはいかないのだ。]
みんなどこで降りるつもりだったのか、一応聞いてもいいかしら。
[煌めくような車両の中。
人はまばらであったため、その声は全員に届いただろうか。]
ああ、これは夢だって逃避するのは簡単だけど。
そのまま違うとこに連れて行かれるのはおねえさんも困るのよね。
[元々受け入れがたい現実というものには幾度も直面してきた藍里は、今すべきことを頭の中で組み立てる。
自身を落ち着かせるためにもつらつらと告げた。
その声は客応対に慣れている丁寧な声音で、若い子達が不安にならないよう配慮した結果だった。]
(51) 2016/08/14(Sun) 16時半頃