あ…………!!
[のし、と床が微かに揺れる感覚がして顔を上げ、振り返る。
そこにオークの姿を認め、己がまず覚えたのは恐怖ーーでは、なかった。
ぞくん、と背筋を何かが這い上がる。
乱れた息には熱が混じり、理性を湛えたままの双眸が揺れた。
あれに捕われれば、またあの快感を味わえる。
あれに捕われれば、今度こそ己は理性を保つことが出来なくなるだろう。
散々に甚振られた身体には、立ち上がって逃げるだけの力は残っていない。白衣を両手に抱えたまま、膝を床に擦るように
して、ずるずるとオークから逃れようとする。
しかし、いくらオークが鈍いとは言え、這いずるのと歩くのとでは一歩の幅に大きな差が出てしまう。捕まるのは時間の問題だ。
或いは己は、それを望んでいるのか。分からない。
僅かな距離を這って、視線は背後のオークから前方へ。
そこに歩み寄ってくる誰かの影を認め、目を細めて凝視する。]
(51) 2016/06/04(Sat) 13時半頃