[ポケットを探る手はなかなか上手く行かない。
リーレイを引き摺って移動した時は追いつかなかった老人>>27が、追って来たらどうしようとも焦る。「そん肉、寄越せ…」と言う耳に残る声。老人もやはりリーレイを にく として狙っていた訳で。
ポケットから出て来たアンプルは色が異なる二つ。リーレイの視界にも入るはずだ。薬剤の成分を片目で何とか確認しながら、]
あ、あ 、
ち、痴死病は、ワクチンが作れる、や、病だからね。
リ、リーレイさん。
き、君が 私を見逃してくれるなら、
わ、私も君を助けられるかも──し、し、しれないよ。
見逃してくれたらッ!
わ、私はまだ病がそれほど進行してないし、
幸いな事に、役立ちそうな薬が二種、
ポケットに残っていたんだ、ほ、ほ、ホラ。
[二本のアンプルを見せてポケットに仕舞う。
片目が潰れたままの顔で、何とか薄笑みを顔に貼付け直した。ポケット、リーレイ、地面に転がったはずの眼鏡を探す、と、スティーブンの視線はめまぐるしく泳ぐ。]
(50) 2011/05/16(Mon) 01時頃