[それから。
喧嘩別れしてしまった妻のこと、名も知らぬ、自分の子であってそうではない少女のこと。
思い出し、話すほどに、胸がチクチクと苦しくなった。
涙を堪えようと俯いて、震える声を抑えるようにサンドイッチに齧りつけば、クセのある髪に小さな手が触れてきた。
>>32微かなぬくもりと、優しい声。
僅かだけ視線を上げれば、そこには、愛くるしい微笑みがあって。
胸の痛みが、ゆっくりと引いてゆく。]
………………。
[なのに逆に、涙が止め処なく溢れ、零れだす。
”悲しい時に泣かないと、楽しいときに笑えなくなる”
そうか……3人の親子の姿を見たあの時、とても悲しかったはずなのに、涙すら流すことができなかったから。
だからずっと、つっかえていたのか。
悔しいな。
こうして沢山涙を流した今、もしもう一度、彼女たちに会えたなら、きっと心から「幸せに」って言えただろうに。]
(50) 2015/12/13(Sun) 13時頃