―壁際―
[ ――Jから、返答は、なんらかの反応はあったか。ベネットにとっては、伝えるのに精神をすり減らすような、ぎりりとした痛みを感じながらだ。
天井上に触手が潜んでいるのにも気づかないで。
しなやかな肢体の主、Jの選び取ったキルロイがやって来たのに、僅かに身を退いた。Jを側に呼び寄せようとしたと思ったからだ。
けれど、その予想とはまるで違う方向に、事態は進んだ>>46]
――、は、ぇ……?
[ 見るものを惹きつけるような微笑み。
――強く、憧れを集める対魔忍隊長、桐生ロイ。
こんな顔で笑う彼をベネットは初めて見た。
言葉の意味を噛み砕くのにも時間が掛かる。
体はまるで動いてくれなかった。
だって、彼の瞳は赤くなかった。魔に完全に堕ちてはいなかった、なのに。]
――っ、な、に、何で、――っそんな、貴方に、そんな必要なんて……っ
[引き寄せられて漸く疑問を口にし、腕から抜け出そうと身を捩る。]
(49) 2016/06/17(Fri) 20時半頃