仕方ないだろ。
俺のこいつは繊細になんて闘えやしないんだから…
[壊したのはほとんど自分だと図星を言い当てられて、>>38モノは出さずに右腕をくいくいと曲げて見せる。
不満気な顔は長くは続かず、ぶつくさと言いながらもステンドグラスを近くで視たいという声に、長い脚立を下で支えた。
ここに来る前では考えられないようなしっかりとした足取りで高い脚立を登る彼に安堵を覚えながら、離れてゆく靴底を見送る。
ゲームが終われば視られない世界。
命を天秤にかけて臨むには、足りないような気もしたけれど]
なあ、ケーゴ。俺の故郷には、これの何十倍のがある。
聖堂だってもっと長くて、天井だって高くて
クーポラから街全部の赤い屋根の絨毯が見られるんだ。
[瞼の裏にサン・ピエトロからの眺めが浮かぶ。
躰を斜めにしないと通れない狭い数百段の階段の上、
屋上から見えるのは、イタリアへ開け放たれた国境と
丸い舞台のように切り取られた聖堂前の広場。]
(49) 2014/12/12(Fri) 22時頃