─回想/5月2日 午前 住宅街─
>>10
……、悪ィな。
[数拍の口篭りは、自身の失態がそのまま眼前の少女の傷を抉ることに繋がるのを承知していたが故。相手の身の反応を見るだけでも、理解できる。日々を無遠慮に過ごす己とて、あえて裏側を選んで生きる訳でもない──当時はまだ、今より幼さも宿す顔立ちだった──彼女なりに「当たり前の暮らし」を過ごそうとしていた筈の、少女の記憶の暗部に敢えて触れる気があった訳でもなく。決まり悪さに少し、地面に置き直した傘の先端を見て、再び彼女に薄めた瞳を戻した]
──。忘れちまえるモンは、忘れんのが正解だろうさ。
「元気そう」でちっとは安心した……と言いてェとこだったがな、
[佇む姿、その足元がやはりどこか頼りなくも見える事へ、改めて小さく肩を竦め]
…そうでもなさそうか?──…余裕ある暮らし、ではねーみてえかね。少なくとも、この暫くは。
(49) 2013/07/23(Tue) 23時半頃