― 休憩室のドア傍 ―
[キルロイがヤナギに手を伸ばす。
その光景を、休憩室の扉の枠に凭れかかり、眺めていた。
右手の人差し指をくるりと中空で泳がせれば、応えるように床から蚯蚓が這い出てくる。但しそれは、これまでのような細かなものの群れではなく、人の背より大きな、天井に触れんばかりのサイズのものだ。
蚯蚓は己の前で、だらだらと涎を垂らしながらキルロイを見つめている。
もし、>>46Jがキルロイのチャームを破って動く素振りを見せるならば、その軟体をしならせて、キルロイを丸呑みにしようとするだろう。]
…………。
[かつて、四井を人質にした際も、彼は動けなかった。
今回の人質は愛しい息子であり、更に情を交わした相手でもあるのだから、足止めの効果はより大きい筈だ。
挑発するように真紅の双眸を細め、夕暮れに染まった瞳を見遣る。つい先刻、己の頬を濡らした涙の跡は、もう何処にも残ってはいない。*]
(48) 2016/06/17(Fri) 20時頃