[ 要するに、己はガスを纏った肉らしい。
肌が朧に見えるのも、身体スキャンが上手くいかないのも、
小惑星特有のガスが原因のようだった。
身体を害する訳でもなく、反対に何か役立てる訳でもなく、
僅かに不快を与えるだけの何の意味もない靄のようなもの。
しかしそれに阻まれて、自身については未だ朧なままだ。]
……うちゅう、 くら げ。
[ 己と同じくらい、知らないものの名を呼んだ。
危険で、侵食して、脅やかす。きっと、相容れないもの。
何に気をつければいいのだろうか。
どうしていればいいのだろうか。
己や皆のことを知るのは楽しかったのに、”それ”については知らないことが怖ろしかった。
胸元に手を当てる。肌は怯えて波打つのに、不安に鳴く鼓動はやはり見つからない。
残ったコーヒーを呷ると、苦味が濃くなった気がした。]*
(48) 2020/08/25(Tue) 21時頃