―集合場所―
[秋にしては甘い水色をした空を背負って、
ミロ=クレパスキュールは佇む。
足元から伸びる影は少し先で停車するマクロバスに向かって、もぞもぞと頭や肩を揺らしていた。影を伴って落ち着きなく動くミロは、荷物の最終確認に忙しい。
防寒具は足りるだろうか。ライトの電池に予備は要らないだろうか。非常時に備えた食料はどうだ。傘は持ったが、レインブーツの用意もあったほうが良かっただろうか。手元の手帳に書きつけた細やかなメモと、一昨日から取り掛かった荷造りの記憶を照合し、懸念事項ひとつひとつについて検討していく。携帯端末でこの地方の天気予報を確かめるのは、これで今朝から5度目だった。
出発の間際にいたるまで様々な不安に駆られる男の荷物は当然、異様に大きい。まるで世界旅行にでも出掛けるかのような大荷物を抱えて、ミロはようやくバスに向かって一歩を踏み出す。]
(44) 2015/11/10(Tue) 21時頃