―食堂と靴屋を往復/午後―
[リッキィに手を振って先に食堂を出ると、自慢の靴で大広場を駆け抜け、自宅である靴屋の工房へ。その間に擦れ違う者があれば、村の知り合いだろうと大陸からの初対面だろうと、挨拶の一つくらい交わしたかも知れない。
さて、靴屋に置いてある傘は母と妹の分二本と、お客さん用の七本。トニーはその中から紺に白の水玉模様が付いた一つをうりゃっと束から引き抜く。家内にいる母に「リッキィねーちゃんにかしてくるー!」と叫び、ぐずぐずになってきた空の下を再び駆け出した。]
おお、すげー雨のニオイする。
ほんとに雲まっ黒だなァ、
ムリヤリ夜になったみたいだ。
[靴屋から食堂までは、大した距離も無い筈だ。なのに傘を取りに来ただけの間に早くも、びしょ濡れスポンジ状態の雲が如何にも重たそうに近くの空に差し掛かっている。何時降り始めても可怪しくない。復路はますます急ぎ足で、元いた食堂へと辿り着いた。]
(43) 2017/08/08(Tue) 22時半頃