[まだ少し肌寒い季節。
白い百合の花束を抱え、彼の記憶を頼りに墓石を数えて。
LIPと刻まれた灰色の群れ、人は死ねば皆この石を生きた証として並べられる。
Billyと彫られた名を辿り、墓前に片膝を付いて、十字を切る。
そうしていると胡散臭い神官と言う肩書きも、様になって見えたかもしれない。
墓前に音もなく白百合を添えると、トレイルに視線をやり。]
――…来い、トレイル。
お前も挨拶をしておけ、どうせ不精をしていたのだろう。
[彼に右手を伸ばして、その肘に五指を添えた。
彼のセージグリーンの瞳を覗きこむ、黒の双眸。
相手が腰を落としたところで、支える腕力が捕まえる握力に変わる。
引力は下方へ。
彼はいつかと同じように、己へ落ちる。
既にマナーは弁えていたが、瞳を閉じず、彼を見つめ、唐突に唇を仰ぐように奪った。*]
(42) momoten 2014/02/08(Sat) 18時半頃