[母を評価され、三白眼が大きく開き、驚きの表情を見せた犬>>36。
弱肉強食の世界でもあり、弱者が当然の様に虐げられ、理解される事など無かったのに。]
……そうだな。
俺は、お袋のお陰で生きてこれた。
だから、お袋を守ってあげたかったが、それは出来なかったんだ。
[自分の為に懸命に闘う母を守りたかったのに、それが出来ない惨めさ。悔しさ。
弱い母を守ろうと無様に足掻く姿を見て悲しむ母を見るのが心痛かった。だから力を欲した。それが力を欲した真の理由。
母を理解し、敬意を表する吸血鬼は媚びる事を嫌う理由を話す。
それは王になって、乞食の様に媚び諂う弱者を見てきた辟易の様に思えて。
弱者である自分には分からない世界の話なのだが。]
ずっと、そんなのを見て来たのか?
たった一人で、……ずっと。
[100年も満たずに生きて来た犬には分からない想いだが、こいつは孤独だったのではないのだろうか、とぼんやり思い口にしながら。
力無い人間だった者に力ある悪魔が媚びる皮肉さを感じさせる事を言う吸血鬼の王を笑う事は無い。
ただ真剣に、真っ直ぐと彼の顔を見遣り、語られる昔話に耳を傾けて。]
(42) 2015/08/05(Wed) 22時頃