[停留所に到着するたびホームに降りて行う安全確認。
乱れぬダイヤは寸分違わぬルーチンから生まれ、マーケットの最中もそれは変わることがない。
駆け抜けていく子供たちにも丁寧に会釈すれば、運転席にかじりつく姿に昔の自分を重ねて懐かしさが湧いた。指差喚呼をするまでは少年心を満たしてやりたい欲が勝って、乗降介助の必要な乗客を探し、視線が止まった先は路面電車の常客。>>33
停留所は遮蔽物がないため見通しが利くものの、列車とは別の方角へ歩いていく姿を一目で判別出来たのには訳がある。
――― 面影があるのだ。
かつて坂の上に住んでいた老夫婦の。>>15
流石に彼は手を貸すほどの年齢ではないが親しみを覚えるのは事実で会えば会釈は欠かさない。今も蟀谷に掛かった髪を掻き上げるようにして制帽を被りなおし頭を下げた。
――― 既に視界からフレームアウトした後かもしれないけれど。]
(41) 2019/07/25(Thu) 23時半頃