[ガラン。
店の出入り口のベルが鳴る音に、暗い部屋で薄らと目をあける。
眠っていたわけではない。あの祭の後ふらふらとそのあたりをうろついて、食材を調達して帰ってから一晩中、日持ちのきくピクルスやらパイ生地やら、ハーブや実を挽いてまじないをかけたスパイスを仕込んでいたのであった。
一通り気が済んで椅子にかけて佇んでいた体を起こし、キッチンからラウンジ兼ダイニングルームに顔をのぞかせる。
その狭い部屋には不釣合いな長身の、リザードマン。>>23
彼はたまにこの店に食事を採りに来る。自分も彼の作る装飾品は気に入りであり、見物に行ったり雑貨を買ったりする。]
よぉ、トカゲ屋。
探し物は見つかりましたか。
まだまだ探す気ですか。
[トカゲ男の装飾屋、略してトカゲ屋。そう気軽に使った呼称は彼の気を悪くするものだったかどうか。昨日、通りで彼を見かけたことを思い出して、ついでに問うてみる。]
で、メシ食いに来たの。
(41) 2015/01/09(Fri) 12時半頃