[ その変化は、唐突であった。
此の世にあるありと凡ゆる感情を掻き集めたところで表現する事は叶わないであろう、オスカー・フィニオンの嗤い顔。
其の大きく横へ開いた口に連動したかのようにして、空間へ無数の“裂け目”が産まれてゆく。
暗い、どこ迄も底無しに暗い闇を抱える裂け目はオスカーを囲うようにして展開されていた。
そんな明らかに異質で不気味な舞台の中心で、オスカー・フィニオンはなお嗤う。]
あぁ、久しいな、『悪魔』殿。ようやく、ようやくキミを殺す準備が整ったところだよ。どうだい、ワタシが用意した『封』の味は、一国を覆い尽くすキミの『嵐』でも、たったこれっぽっちの裂け目を生み出すのが精一杯だろう? 『怠惰』の力は全て内へ向ける事となったが、自分の権能の一部に縛られた気分はどうか、ね? ははは、そう声を荒げるなよ『悪魔』殿……12年、12年だ。ワタシはキミを屠る為に12年耐えた、此の身を蝕む『怠惰』へ圧力をかける術を見つけ出し、キミを消滅させる為の術式を生み出した……まぁ、これは『魔術師』殿のお膳立てあっての事であると云う事実は、ワタシとしても認めるところではあるのだが、ね?
(40) 2014/07/19(Sat) 18時半頃