― 廊下 ―
[階段を探す途中、どこからか女性の絹を裂くような声が聞こえた>>11
声の方に警戒して顔を向けるが、そこに想像したような地獄絵図はない。
生きる意志を問う老紳士。泣き叫ぶ淑女を優しく抱き留める女性。
漏れ聞こえた会話の端々を繋いで私が思ったのは、憎む主と対して変わらぬ事>>32
大切な者を失い、尚生きる事を願って、救われた事などなかった。限りなく黒に近い色をした未来を生きろと、そう聞こえる。なんと残酷な事だろうか。
死なせてやるのが一番の温情だと感じながら何も聞いていないような顔で彼らの死角を通り階段を昇った。
私がこの淑女に情を感じていたならば、その喉を裂きに行っただろうが]
[向かう先はこの場に相応しくない声を上げる主の下>>31
いつものように目を合わせぬよう膝を付き]
……お呼びでしょうか
[抑揚のない声で話しかけた]
(40) 2014/07/15(Tue) 19時半頃