こうして動いているのは、蛙さんの神経細胞がまだ死滅していない証です。
背中の表皮にあてがった塩酸の刺激は、電子信号となって各四肢に伝わっているんです。
自分の意思には則らない、反射的な行動ではありますが、ね。
ほら。膝をコツンと叩くと、足が上がるでしょう?
あれと同じ、不随意反射の一種なんです。
[言いながらも、妙な喩を入れてしまったかと自省する。
扱い辛い、とまではいかなくとも、男に対し気後れする生徒だって、いるのかもしれないのだから。
気にかけながら語る男の視線は、きっと生徒たちを見上げる形となっている]
ともあれ、こうして脳髄を失った状態でも、神経が残存していれば、外的な刺激に応じた反射的な行動には移れます。
もっとも、今言った通り、感情や本能による行動は、中枢を失った今となっては不可能ですけどね。
多くの生物にとっての中枢は、脳。
欲求など目的をもった随意運動や臓器の蠕動など不随意運動は、脳から電子信号が発せられて、それが神経系の経路を伝わり、結果としてアクションが起こります。
そして、その経路のどこかが阻害されると――――
(40) 2011/11/26(Sat) 19時頃