[分厚く重いそれを彼の前、テーブルの上に差し出して、
待っているのは、蓋をする前、瓶の中の記憶の欠片。
根は酷く深く食い込んで、外側からこじ開ける事は愚か、触れる事さえ叶わぬだろう。
ならば内から緩めさせるまで。
強い力は栄養に。
だが、強すぎる力はその身を焦がす。それは彼がそうであったように、心臓に住まう娘も恐らくは。
浸み出す蜜を啜る存在が、濁流に耐えられるとは思えない。
もし開いた瓶を食らいつくされ、彼が災厄に呑まれたとしても、それは期を早めただけ。
どの道このまま放っておけば、彼も娘も封歴琥珀《スリーピング・アンバー》の仲間入りだろう。
…いや、災厄の琥珀《ディザスター・アンバー》レベルまで育ってしまっているか。
塞ぐ女神の居らぬ今、
そして、翡翠を取りこんでしまったあの無茶な宝珠魔道士《ジュエリスナイト》に、これ以上迷惑をかけぬよう、
琥珀になる前に、する前に。
始末する事になってしまっても、心苦しいがそれも仕方のない事か。]
(40) 2014/11/19(Wed) 18時頃