[触角男>>37、と呼ばれてぴょこんと触角が動く。
喋ったことには特に驚かない。そういう宇宙人なのか、と思っただけだ。]
これは失礼した。
化学者のアーサー、か。覚えておこう。
わたしはトルドヴィン。……焚書官をしていた。
[外骨格じみた手を片方胸に当てて、簡潔に名乗った。
彼、アーサーの毛並みから男が連想した"襟巻"は女王の首元を覆う和毛であり、女王が女王であることを示す印とも言える、女王本人の体毛である。
その連想と彼の尊大な物言い、それに化学者という肩書き(男の母星では知識層はある程度の地位を保証される存在である)から何となく、敬意を払うべき相手であると認識した。]
……。
[それはそれとして、何となくその視線に寒気を感じたので触角は引っ込めた。]
(39) 2020/08/22(Sat) 16時頃