[己にとってキルロイは光だった。
常に前を行き、己の往く道を照らす道標だった。
己が魔に堕ち、道を違えて尚、キルロイは己の愛する存在の気配を纏い、そこに在った。
苦しみから逃れる為にもがき足掻いた道の果てにあるのは、ただひたすらの空虚だった。次に踏み出すべき一歩が見えない。
そんな時に己を導くのは、キルロイだった。
直円の魔力の匂いを纏い、キルロイが現れる。
彼が己を導くのだと信じたかった。暗闇だけに囲われた心を照らすのだと信じたかった。直円のように、かつてのキルロイのように、己の行く先を照らすのだと、信じたかった。
しかし。
>>23キルロイは、己を振り返らない。
そうだ、いつもそうだった。彼の目は、己を見ない。]
……………ふ、
[笑うような吐息が、唇から零れ落ちた。
同時に、己を取り囲むように床から赤黒い触手が這い出てくる。先程ヤナギを苛んだものと性質は同じでありながら、それは血のように昏く、禍々しい気配を放つ。]
(38) 2016/06/15(Wed) 19時頃