―夜→朝/物置→宿の高級な部屋(回想終了)―
[長居しすぎたのに気がついたのは、空も白んだあとのこと。
物置に再び鍵をかけ、宿に戻ったときにはすでに、忙しく働く者の姿があったかもしれない。
そっと部屋に入れば、寝息を立てるふたりの姿。
それを一瞥して、静かに自分のベッドに戻ろうとしたとき、リッキィと名乗った少女が苦しそうに寝返りをうつのが目に入る。
顔を見れば、安らかとは言えない相貌で。
悪い夢でも見ているのだろうか。彼女の布団をそっとかけなおしてやり、声は出さず口のかたちだけで「悪夢の主よ、去れ」とつぶやいた。
彼女の内に巣食う悪魔はどんなものなのだろう。
なぜか、自分がかつて悪魔の子と呼ばれていたことが思い出されて。
カリュクスに去れと命じられた悪魔は、嗤っているだろうか。
ほんの短い間、彼女のことを見守って。
自分のベッドに戻ると、今度はだれもが目覚める時間まで起きだすことなく眠りについた。
二度目の凶行が起こったなどとはつゆ知らず]
(38) 2017/08/15(Tue) 17時半頃